定年後の再就職というのは、採用する側からすると、知っている人からの紹介というのは、その人となりがわかっていることから安心できます。そういう意味で現役時代にネットワークを構築しておくことは大切と言われています。
また、再就職には自分の売りとなる専門性があると有利になる時代になってきました。
Sさんはそれを意識していたわけではないが、後で考えてみれば、今の時代に必要なこの2つを着実に行っていたというのだから、その感性の良さに驚きます。
Sさんは58歳の時に大手製薬会社を早期定年退職。60歳まで働くつもりだったがご家族の事情のようでした。
しばらくは人材紹介会社でコンサルを受けながら仕事を探したが思うような仕事が見つからず、時間が過ぎていきました。
そんな折、Sさんはゴルフに行った時、一緒にラウンドしていた、前職時からの知り合いの方(Nさん)に、ダメもとで「よかったら何か仕事を紹介してもらえませんか」とお願いしてみたのです。
その方は前職の時に不思議な縁で、長く一緒に仕事をした方でした。
Sさんは3回転勤しましたが、転勤するのに前後してNさんも転勤するという、偶然とは思えないことが起こりました。
当然お付き合いする機会も増え、「お酒もゴルフもよくしたなー」とSさん。
お互いの気心も知れ絆は深まっていったのです。
お願いされたNさんはSさんより早く前職を退職し、再就職先で業績を上げ要職についておられました。
「わかった。考えておくよ」とNさん
ゴルフが終わりしばらくして、Nさんの会社の方からSさんに連絡が入りました。
「ぜひうちの会社に入社してほしい、何日からお願いできませんか」いきなりの申し出です。
何でも面接もなかったようです。
おかしいなと思い詳しく聞いてみると、Nさんが社長に推薦してくれたのではないかということでした。 ただそれだけでなくて、Sさんは前職時代、その会社と仕事上でお付き合いがあり、様々な企画を持ち掛け貢献していたという流れがあったのです。
当然、会社の社長もそのことをご存じだったと思うので、Nさんからの推薦に頭を縦に振られたことは想像できます。
現役時代の得意先との丁寧な仕事ぶりが、後になって役立ち、縁を結んだ好例です。
現役時代から人と深くお付き合いし信頼関係を結んでおくことが、後々自分を救うきっかけを作ってくれる、忘れてはいけないことと実感しました。
さて個人と会社との信頼関係構築、ネットワーク作りに加え、もう一つ再就職の際にキーになる大切なことがあります。
それは「専門性」です。
Sさんは営業職も長かったのですが、その後に流通の仕事に移り、前職を辞めるまでその仕事に従事していました。
営業と流通の仕事は両輪で、営業の人には流通の複雑さは理解しにくく、流通の方は欠かせない存在になります。
Sさんはこの専門性を長年深めていたので、流通面を期待していた会社側としては欲しい人物だったのです。この特異なスキルと知識があったからこそ、上手くいったのは言うまでもありません。
Sさんは、紹介してくれる人、普段からのネットワークづくり、そして専門性、3つの輪が全てそろってからの再就職でした。まさに再就職のモデルですね。
Sさんは、「今の職場は自分の裁量で仕事が出来、居心地がいいから、70歳になるまで働こうかなー」と言っています
その後はどうするのか聞いてみると
「ゴルフ、車、カメラ、パソコンの組み立てなどやりたいことは一杯あるので楽しむつもり、でも仕事も続けるかも」
「やっぱり仕事が好きなのかなー」
Sさんの顔がほころんでいました。
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