2021年のノーベル物理学賞に日本出身で米国籍の真鍋淑郎・米プリンストン大学上席研究員(90)が受賞されました。
ご高齢にもかかわらず、お元気で活舌よくハッキリおしゃべりになるにはびっくりします。
真鍋さんはインタビューで「好奇心」を大切にしてきたと語られていました。
好奇心があることで、学ぼうという姿勢を保ち、アドレナリンなど化学物質が出て元気になると想像できます。
では医学的にエビデンスがあるのか調べました。
「好奇心が強く、新しいことにチャレンジする」という心の持ち方を、「経験への開放性」と呼び、これと「知的能力」との関連性をみた論文を見つけました。
40~82歳の方々、2205名に「経験の開放性」に関しては12の質問、「知的能力」に関しては知識力と情報処理スピード検査を使って約10年間にわたり測定。
結果として、知的能力は好奇心が高い人の方が低い人より高く、10年間経っても下がりにくいことがわかりました。年齢は関係なかったようです。
さらに重要な発見として、高齢の方ほど、「経験への開放性」という心のもちかたが、その後10年間の知的な能力の‘変化’に好ましい影響を与えていたのです。
図では、75才の方を想定したときの、「経験への開放性」と知的な能力のひとつである「知識力」の変化との関係を示しています。「経験への開放性」が高い75歳の方は、もともとの「知識力」の得点が高いだけでなく、10年後、85歳になってもなお、高得点を維持することができています。しかし、「経験への開放性」が低い75歳の方は、もともと「知識力」の得点が低いのですが、10年後には、さらに得点が低下していることがわかりました。
「知識力」は、人生の経験を重ねることによって成熟していく、年輪のような能力です。このような知的な能力を、心理学者のキャッテルは、宝石が結晶していくことになぞらえて「結晶性知能」と名づけました。散歩しながら草花を調べてみたり、珍しい野菜作りに挑戦してみたり、住んでいる土地の歴史を調べてみたり・・・。高齢になってこそ、好奇心旺盛に過ごして、興味や関心を広げたり掘り下げたりすることは、結晶性知能をいっそう磨くことになります。
そうした好奇心が真鍋さんのノーベル物理学賞につながったように、定年後も好奇心を失わないことで定年活動も実りあるものになっていくでしょう。
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